この記事を書いた人
ナチュラルライフスタイル/天然酵母パン「気まま家」主宰
ディコステ りょうこ
こんにちは、気まま家のりょうこです。
突然ですが、あなたは毎日醗酵(はっこう)食品を食べていますか。
”朝ごはんの時に毎日ヨーグルトを食べています”
”和食党なのでお味噌汁は毎日必ず飲んでいます”
”夜の晩酌にいつもワインとチーズは欠かせないわ!”
など、意識はしていなくても、醗酵食品を日々摂っている人は多いのではないかと思います。
私は目に見えない微生物たちが繰り広げる、健気で神秘的な世界が大好きです!
目には見えないのに生きていて活動をしていて、その活動ぶりによって存在を感じ取れるということに惹きつけられ、引き込まれ、共に暮らしている毎日です、笑。
今日はそんな醗酵食品や醗酵のある暮らしについて、あなたにもちょっとだけ興味を持ったり焦点を当ててもらえるように、普段より少し深堀りした世界をご紹介していきますね。
”醗酵食としての本物のパン作り”を通して温かい心の通い合う家族関係、心身ともに健康な笑顔あふれる食卓を広める「気まま家」プロジェクトをしている私の普段の醗酵ライフについても触れていきます。
醗酵をより身近に感じて、あなたと大切な人たちの健康的な暮らしに活かしていけるアイデアを受け取ってもらえたら嬉しいです。
醗酵(はっこう)は
醗酵(はっこう)の定義は日本の醗酵食研究の第一人者、小泉武夫先生によれば
「細菌類、酵母類、糸状菌(かび)藻菌類などの微生物そのものか、その酵素類が有機物または無機物に作用して、メタンやアルコール、有機酸のような有機化合物を生じたり、炭酸ガスや水素、アンモニア、硫化水素のような無機化合物を生じ、なおかつその現象が人類にとって有益となること」
とされています。
ただ定義だけ読んでみてもちょっとイメージが湧きにくいですよね。
もう少しわかりやすく例えると、
人間は食べ物を食べて
↓
体の中で消化し
↓
活動するためのエネルギーを作り出し
↓
使われなかったものを尿や便として体から出す
これと同じように、
麹かびが大豆(食べ物)につき
↓
タンパク質を分解(消化)して
↓
アミノ酸(エネルギー)を作り出し
↓
味噌になる
酵母が小麦や砂糖(食べ物)の
↓
糖やグルテンを分解(消化)して
↓
水や二酸化炭素(エネルギー)を作り出して
↓
パンになる
細菌(乳酸菌)が牛乳(食べ物)の
↓
乳糖を分解(消化)して
↓
乳酸(エネルギー)を作り出して
↓
ヨーグルトになる
どうでしょう、イメージが湧きましたか?

醗酵(はっこう)微生物
微生物のこの一連の活動が醗酵です。
上の例に挙げた「かび」「酵母」「細菌」が醗酵微生物の御三家です。
醗酵微生物の大きさは1nm*〜100nmくらいで人間の肉眼では見えないものがほとんどです。
*1nmは1mmの1/1000のサイズ
目には見えないほど小さいけれど、人間と同じように生き物の仲間なんです。
醗酵(はっこう)と腐敗
この醗酵微生物たちの活動の中で、
人間にとって利益になるのが醗酵。害になるのが腐敗。
という紙一重ほどの違いで、食べ物が腐るのも腐敗菌という微生物たちの仕業です。
人間が自分たちの利害に基づいて虫を益虫(てんとう虫、蜂など)と害虫(アブラムシ、蚊など)に分けるのと同じ感じで醗酵と腐敗も分けられています。
また、納豆は日本人にとっては醗酵食だけれども、納豆を知らない外国人にとっては腐った大豆にしか思えない、というような文化的な背景が関わってくることもあります。本当に微妙な境界です。
野生の醗酵微生物と家畜化された醗酵微生物
さらに醗酵微生物の中にも、野生の醗酵微生物と人間が管理する家畜化された醗酵微生物がいます。
ザワークラウト(キャベツについている野生の微生物)は野生の醗酵微生物、日本の麹は長年にわたって選別、管理されてきたので家畜化された醗酵微生物となります。

発酵(はっこう)と醗酵(はっこう) 〜私が使い分ける理由
醗酵の定義や醗酵のプロセスをご紹介しましたが、ぜひあなたに注意してほしいことがあります。
世の中には安易に大量生産された、本物ではない発酵食品がたくさん出回っているんです。
そしてここまでブログを読んで来てくださった皆さんは、私が「発酵」と言ったり「醗酵」と言ったり、漢字を使い分けていることにお気づきかと思います。
その理由もこれからお話していきます。
醗酵(はっこう)していない発酵食品
”みりん風”調味料という風味を似せただけの調味料や、浅漬け野菜にキムチ風味をつけただけのもの、イーストで短時間で簡単に膨らませただけのパン、などが見渡す限りお店に並んでいる現実に気がついてほしい〜!
これらの商品は上に挙げたような本当の醗酵の過程を経ていない「醗酵していない発酵食品」なのです。私が日頃慣れ親しんでいるパンを例にとってもう少し詳しく説明しますね。
本来は酵母が醗酵する過程で発生したガスの力を用いてパン生地を膨らむのに対し、ケミカルイーストや天然酵母を謳っていても実際の醗酵を経ていないパンは、工程を短縮させるためにパン生地を膨らませることだけで発酵とみなしてしまっています。
また本来の醗酵の過程では、酵母が餌になる糖分などを食べ尽くしているので悪いカビや腐敗菌の餌になるようなものは残っていないこと、たくさんの酵母が集まって作られたコロニーの中では少数派の雑菌などは排除されて生き残れないことの二つが素晴らしい効果をもたらします。
このおかげで、本物の醗酵食品は自然のままの状態で添加物を加えなくても傷みにくく、多くのものは常温で長期保存ができるのです。
ところが「醗酵していない発酵食品」は醗酵していないために、傷まないようにさらに添加物(防腐剤や保存料など)が加えられたりしてしまっていて本末転倒な状態です。
本物の醗酵(はっこう)
私が主宰する気まま家の気ままパンは自家製の楽健寺天然酵母で「本物の醗酵」の過程を経ているのでもちろん添加物もなし、安心安全で常温でも長持ちします。
楽健寺天然酵母パンの創始者の山内宥嚴先生が著書の中で、本物の醗酵には「醗」の文字を、そうではない発酵には「発」の文字を使い分けられています。
私もそれに倣って、醗酵と発酵を使い分けるようにしています。
「醗」という文字の”酒”という部首がついただけで、もうあれこれ説明がなくても芳香な醗酵の過程とその出来上がった食べものたちが思い浮かびませんか。
大量生産、大量消費、管理の簡素化、価格を安く抑える、などといった現代人間社会の利己的な理由のために本来の醗酵食品からかけ離れたものとなって、いつしかそれが当たり前になってしまっている製品がたくさん出回っているので、しっかりとした目を養って賢く選びたいですね。
身近な醗酵(はっこう)食品
日本の醗酵食品ー日本酒、味噌、味醂、醤油、酢、塩麹、甘酒、納豆、鰹節、漬けものなど
世界の醗酵食品ーパン、ヨーグルト、チーズ、ワイン、ザワークラウト、キムチ、酢、コーヒー、チョコレート、テンペ、生ハム、コンブチャなど

なぜ醗酵(はっこう)食品がいいの?
醗酵食品には積極的に取るべき素晴らしい効果がたくさんあります。
- 食品そのものの栄養価を高めたり味を深める
- 消化吸収が良くなる
- 腸内環境を整える
- 免疫力アップ(免疫細胞が活性化するための”指令ボタン”を押すといわれている)
- 食品の保存性を高める(一定量を占めると自分以外の微生物の生育を阻止または死滅させる作用)
- 生活習慣病の予防
どれをとっても本当に素晴らしいですよね。
醗酵(はっこう)食品のデメリット
一方で、どんなに体に良いといわれる醗酵食品にもデメリットはあります。
醗酵食品は一般的に塩分が多い傾向があります。
カロリーが高いものもあります。
どの食べ物でもそうですが、過剰に摂るのではなく適量を心がけましょう。
もっと知りたい人へブログやレシピの紹介
Wellness To Goには腸内環境や醗酵についてを扱ったブログもたくさん掲載されています。
その中の一つがこちらです。
プロが教える!腸内環境を整える7つの方法。腸内フローラとは?
アプリの中にもErikoさんがおいしくて腸にも優しいレシピをたくさんシェアしてくださっています。
ハズレなしの美味しいものばかりでわたしもいつも重宝しています。
そちらもぜひチェックしてみてください。
日本の醗酵文化
地球上の雨があまり降らず乾燥した地域と比べると、日本は湿度が高い気候なので、醗酵微生物が好むということもあり醗酵文化が盛んになり、様々な醗酵食品が造られてきたようです。
日本の国菌 「麹菌」
桜が日本の”国花”であるように、麹菌は日本の”国菌”として2006年に認定されています。
もともと自然界にあった野生種が、長い年月をかけて改良され無毒化されたのが、現在私たちが口にしている麹です。平安時代には麹菌を育てる「麹座」という職人集団が登場し、室町時代には数軒の「種麹屋」(もやし屋)というものがあったそうです。
米にもやもやとカビが生えたもの、というのが種麹(もやし)の由来だそうです!笑
このように安全な食品を作れるように無毒化された麹が官庁御用達の職人たちによって代々大切に受け継がれてきたと知るだけで、普段当たり前のように食べているお味噌や醤油をはじめとした麹の醗酵食品にも特別な思いが湧いてきませんか?
私はキュンキュンしてしまいます!
そして種麹屋は日本のバイオ企業の第一号ということなのかもしれませんね。
ユネスコの無形文化遺産 日本の「伝統的酒造り」
2024年12月、麹を使って米や麦を醗酵させて日本酒や本格焼酎・泡盛、本みりんなどを造る日本の「伝統的酒造り」はユネスコの無形文化遺産にもついに登録されました。
日本の誇る麹は世界に知れ渡る存在になってきています。

手作り醗酵食のススメ
醗酵を促す目には見えない微生物たちに囲まれて暮らしていると、あら不思議!
知らず知らずのうちに、自分の中身まで醗酵してくるかのように熟成が進み、心もゆったりと豊かに、人生もより味わい深くなっていきますよ。
醗酵食品をおうちで作るなんて大変そうと感じている人もいるかもしれませんが、醗酵食品のほとんどは出来上がるまでの放置時間はかかるものの、仕込み自体は単調な作業で簡単なことが多いです。
わが家で仕込んで切らさないように常備している手作り醗酵食品をいくつかご紹介しますね。
麹を使った醗酵調味料(醤油麹、塩麹、玉ねぎ麹、にんにく醤油麹、生姜塩麹など)
それぞれの調味料の瓶をペアで用意しておくようにして、一つが少なくなってきたら次を仕込み、出来上がっている分は冷蔵庫で保存するように回して毎日のお料理に気兼ねなく使えるようにしています。
シンプルな味付けでもとても美味しく仕上がるし、これらの組み合わせやアレンジだけでほぼ全てのお料理の下味から味付け、ソースやドレッシング作りにも幅広く使えて本当に重宝します。
え?そ、そうです、わが家の冷蔵庫の中は醗酵調味料や醗酵食品でいっぱいです!笑
甘酒
こちらも麹を使った醗酵調味料ですね。
一度に多めに作って、余分は製氷器で冷凍してあります。
お砂糖の代わりに使ったり、スムージーを作るときに冷凍のフルーツと一緒に凍ったままのものを放り込んだり、もちろんそのままをお水やお湯で溶いて甘酒として飲んだりしています。
手前味噌
毎年(場合によっては1年に数回)仕込んでいます。
麹の割合を変えたり、米麹や麦麹と使い分けたり、大豆以外にもひよこ豆や小豆で変わり味噌にしたりして色々楽しんでいます。
同じ材料でも1年ものと3年ものでは味も見た目も変わっていくので、本当に飽きることがないです。
酢玉ねぎ、ザワークラウト、キムチ、水キムチなど
野菜の漬物は乳酸菌が豊富!どれか一つでも冷蔵庫に作り置きがあると、サラダのトッピングにしたり、サンドイッチの具にしたり、つけ汁もドレッシングがわりにしたりできます。
何も作る気が起きない日にもご飯にのっけるだけで、罪悪感なしで心穏やかに手抜きを楽しめます。
お腹を空かせた子供たちがキッチンを漁りにきた時も、ご飯と一緒にかっこんでいるみたいです、笑。
糠漬けも何度か挑戦したのですが、どうも私の焼く気ままパンの酵母と相性が良くないようで…。
全然問題なく作られている方もいるのでどうもわが家だけみたいなのですが、糠床がキッチンにある時は不思議なくらいにパンが全く膨らまない!ということが何度かあり残念だけど諦めました。
目に見えない微生物たちの計り知れないバランスのミステリーです。
気ままパン(楽健寺天然酵母)
日本から遥か離れたロサンゼルスで2012年に自分で酵母を起こし、それから絶やすことなく掛け継いで焼き続けています。
娘の離乳食を作り始めた頃、本当に安心安全なパンはなかなか手に入らないということに気がついたのがきっかけで、おうちで市販のドライ天然酵母でパンを焼くように。
数年続けていた頃に楽健寺天然酵母と出会い、この酵母で焼いたパンの美味しさとそれまでは知らなかった本物の醗酵の奥深さにすっかり惹き込まれ、次第にパンはお店で買うものからおうちでを焼くものというご飯を炊くことと同じ位置付けのライフスタイルになりました。
「本物の醗酵食としてのパン」は腸活にもなるし、最近よく話題になる小麦グルテンの問題にも対応できていいことづくめです。
その素晴らしさを多くの人たちに知ってもらいたい~!という愛が高じて「気ままにパンを焼く会」というオンラインクラスをスタートし、今ではアメリカ各地、日本の人たちと繋がっています。
気まま家ではパン以外にも醗酵食品などを一緒に作るオンラインワークショップも開いているので、もしも興味のある人はぜひぜひインスタ@kimamaya2021をチェックしてみてくださいね。
他にも納豆やコンブチャ、柿酢など、常備ではありませんが食べたい時、飲みたい時に適宜おうちで仕込んで楽しんでいます。

食品以外の醗酵パワー
食品以外としても醗酵パワーは大活躍です。
糠と酵母を混ぜて作る酵素入浴剤は、体が芯からあったまってお肌もしっとりすべすべになります。
観葉植物の水やりには容器にこびりついた酵母を水に溶いてからあげたり(エコにもなる!)、ぼかしなど家庭菜園の土を豊かにする肥料としても使えたりします。
掃除や歯磨きの時、飲用や食用にも使える米のとぎ汁から作る乳酸菌を使うなど、目に見えない生き物たちに囲まれた醗酵生活を日々楽しんでいます。
さいごに
駆け足ながらもギュッと大事なことを詰め込んで、醗酵についてのお話やおうちでの醗酵食の楽しみ方などをご紹介してみました。
あなたの暮らしに今日から足してみることのできるヒントやこれまでとはちょっと違った見え方のするアイデアなどはありましたか?
世界中のあちこちに”おふくろの味”や”家庭の味”という言い回しやニュアンスがあるように、同じような材料を使って同じように仕込む食べものにも出来上がりに微妙な違いが出てくるのは、家庭の中をふわふわと漂っている目に見えない微生物たちの元気度や異なるブレンド具合なのかなあと思わされることがしばしばあります。
そんな目には見えない醗酵の世界に想いを馳せて、今日もあなたが心身ともに健康に暮らすきっかけになりますように。
Have a lovely day!

パンセラピー・楽健寺天然酵母で焼く醗酵食としての気ままパン販売・日本の伝統食と醗酵食・地球に優しい暮らしを楽しむプロジェクト「気まま家」主宰
青山学院大学で幼児教育を学び、保育士、幼稚園教諭としてホリスティックなアプローチで日本やバンクーバー、ニューヨーク、ロサンゼルスなどの保育施設で20年以上、お子さんそれぞれの育ちと親御さんの心に寄り添うお手伝い。学生時代からの”子ども中心の学校で働きたい”という夢を、LAのプレイマウンテンプレイスで叶える。私生活でも3人の子どもたちを同じスタイルで育てつつ、自身もまだまだ”育自”中。子育ての方はいよいよ最終章。夫の突然死で周りに身内もない未亡人となるも、つらい時期を支えてくれた多くの知人に自分ができることで還元したいと強く思い、大好きな酵母パン焼きや健康に気を配った食卓、家族との温かいつながりを軸にした「気まま家」プロジェクトを進行中。
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