この記事を書いた人
ホリスティック栄養士 Eriko
脳と腸は離れているけれど、神経伝達物質やホルモンを使いコミュニケーションを取り合っています。脳からの信号を一方的に受け取っているだけの他の臓器と違い、腸は脳に信号を送り脳をコントロールすることができます。この腸と脳の関係性を腸脳相関と言い、この性質から腸は第2の脳と呼ばれるようになりました。
以前から、心理的ストレスが腸内環境のバランスを崩し腸内細菌の作り出す代謝物に異常を生じさせることはわかっていましたが、そのメカニズムは 明らかにされていませんでした。しかし、2021年に北海道大学が、ストレスによって腸内環境のバランスが崩れ、抑うつ状態や睡眠障害などが引き起こされる理由を世界で初めて説明した研究論文を発表しました。
免疫細胞の7割は腸内に集まっている
腸の壁は体の中に隠れているので体内にあるイメージですが、私たちの皮膚と同様、外の世界から病原体などの異物が体内に侵入しないようにするバリア機能を果たしています。
人間の体を、チューブやちくわに例えるとわかりやすいかもしれません。ちくわの穴の中はからだの外側で、ちくわの身の部分は体内です。口から肛門まで繋がっている消化管と言われる管の内側はちくわの穴の中、つまり体外。栄養素などは消化管の壁から吸収されることで初めて体内に入ってきます。
このように、常に外敵の脅威にさらされている消化管ですが、免疫細胞の7割ほどが腸内に集まっており、外の世界から異物を取り込まないようにして一生懸命体を守っています。
今回の研究でスポットライトを当てられた”アルファディフェンシン”も、腸内で病原体が体内に侵入するのを防いだり、腸内環境を整える働きをしてくれている自然免疫に欠かせない免疫物質です。
ストレスは腸内環境をコントロールするアルファディフェンシンを減少させる
心理的ストレスにより腸内環境を健康に保つ働きのあるアルファディフェンシンという物質が減少します。
アルファディフェンシンは腸内でアミノ酸から作られ、私たちの体に悪い影響を与える病原体を殺菌し、病原体が体内に侵入するのを防いでくれます。面白いことに、アルファディフェンシンは普段から体内に存在する常在菌はほとんど攻撃しません。
アルファディフェンシンが減ると、腸内細菌のバランスがくずれ、腸内細菌が作り出す一部の代謝物の量が変化します。これらの代謝物の多くは、感情や思考をコントロールする神経伝達物質やホルモン、またはそれらの合成に関わるものです。
アルファディフェンシンの減少により影響を受ける腸内細菌の代謝物の例
ビタミンB6:GABA、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミン、グリシン、D–セリンの合成に重要な働きを果たす。
ベータアラニン:PTSD(心的外傷後ストレス障害)の抑うつ状態を緩和する。
リジン:長期的に不足すると、不安や心理的ストレスが増える。
グルタミン酸:記憶や学習、脳内でのGABAの合成、脳機能を低下させる恐れのあるアンモニアの解毒と排出に必要。
この研究では、アルファディフェンシンの減少により起きた腸内フローラと腸内細菌の代謝物の異常の多くは、aディフェンシンを投与することで正常に戻りました。
参考:https://doi.org/10.1038/s41598-021-89308-y
つまり、心理的ストレスにより腸内のアルファディフェンシンが減少すると、腸内環境のバランスが崩れ、腸内細菌が作り出す代謝物に異常が起こります。その結果、脳内で感情や思考をコントロールする神経伝達物質やホルモンのバランスが崩れ、精神状態に影響します。
更なる研究が必要ですが、アルファディフェンシンの量を増やし、腸内環境のバランスを整えることで、抑うつや睡眠障害から解放される人たちが増えるかもしれません。
心理的ストレス以外の原因で腸内環境が崩れても、同じように感情や思考に影響が起こることがわかっています。もしかしたら、近い将来、アルファディフェンシンの量を増やすことで腸内環境悪化による不調が改善されるようになるかもしれません。
腸内環境を整えて”ポジティブ脳”を手に入れよう
腸内環境は食事や生活習慣を改善することで、比較的短期間で変えることができます。個人差はありますが、人によっては2〜3日食事を変えるだけで変化を感じることができると考えれています。
腸内環境の乱れは、腸内環境を整えることで、感情や思考をコントロールする神経伝達物質やホルモンのバランスを整える助けをしてくれます。
普段から、腸内環境を整える食生活を意識し、ストレスとの上手な付き合い方を見つけ、腸内環境のバランスを崩すものをできるだけ生活から取り除くことで、便秘や下痢、免疫機能の低下、肌荒れや老化などのからだの不調をだけでなく、心も整えることができます。
思いがけないトラブルや困難に直面した時に、ストレスに負けずに前向きに立ち向かう助けとなるはずです。
腸内環境を整えるために今日からできること10選
- よく噛んでゆっくり食事を楽しむ
- できるだけ加工されていない食品を選ぶ
- いろんな種類の発酵食品を毎日少しづつ食べる
- 水分補給を忘れない
- 適度な運動
- 自然にふれる
- 自分を喜ばせる時間を作る
- 大切な人たちと過ごす時間をつくる
- 疲れ果てる前に休憩する
- 7時間以上睡眠をとる
まずはこの中のひとつを、今日やってみてください。
こちらの記事もよかったら参考にしてみてね^^↓
プロが教える!腸内環境を整える7つの方法。腸内フローラとは?
いつも笑ってて悩みなさそうで良いねとよく言われる私ですが、大きなハンマーでぺちゃんこに潰されたような気分になる時もあります。それでも、何が起きても後で話のネタになる!と気持ちの切り替えが上手くなったのは、腸内環境を整える食事や暮らしのおかげかもしれません。
腸内環境を整えるために、何かやっていることはありますか?
カナダで大学卒業後、健康志向の高い都市バンクーバーに移住したことで栄養や体の仕組みに興味を持ち、栄養学とピラティスを学びました。その後、栄養学校で身につけた知識を使い体質改善に成功し、幼少期から付き合ってきた数々の不調を改善することに成功しました。現在は、ホリスティック栄養士として、企業向けに栄養関係のコンテンツ作成、ナチュラル食品•製品の開発やマーケティングのアドバイスなどをしています。地球にも人にも優しいナチュラル製品が大好きで、美容家の間で噂のエイジングケアオイル、抗酸化作用がたっぷりの「カカイオイル」を販売しています。
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